「闇将棋」icot Laboratory ネットワーク将棋 エンターテインメント型思考ゲーム
人生の戦いが常に先の見えない「闇」の中であるなら、人生の戦略を戦わせる場は、「闇」こそがふさわしい。
「闇将棋」の戦場では、わずかに浮かび上がる敵の姿を頼りに、激しい「読み」の戦いが繰り広げられる。
敵の駒は基本的に見えないが、特定のルールに従って可視化される。
駒の初期配置が変則的な場合もある。
[駒表示]
<共通>
1つの敵駒のスコープ内(駒の移動範囲)に入ると、駒の色が黄色になる。
2つ以上の敵駒のスコープ内(駒の移動範囲)に入ると、駒の色が赤色になる。
敵の駒の上に張り駒した場合、その駒は敵に奪われ、敵の攻撃番になる。
敵の「王」を取った時点で勝ち。
<個別>
Mode1:スコープ(自軍の駒の移動範囲)内の敵駒が可視化される。
Mode2:9列それぞれで、最も自軍に近い敵駒が可視化される。(最大9個)
Mode3:Mode1,2の両方の条件によって可視化される。
[駒の初期配置]
基本:将棋と同じ配置(1軍20駒)
乱戦:すべての駒が3段の中にランダムに自動配置(1軍20駒)
布陣:王を必須とし、位置(3段の中)も駒の数も自由に初期配置(1軍1~20駒) 配置されない駒はすべて持ち駒として使用可
毎年春秋2回行われる、「闇将棋」のチャンピオン大会。
春季大会(個人戦)
参加資格:Total Rank 5級以上(第1回大会のみ不問)
予選トーナメント:Stage1~3の3戦勝負。上位16人が決勝に。
決勝トーナメント:Stage4~9の6戦勝負。<4勝>、または<3勝でStage9の勝者>が勝ちとなる。
表彰:優勝者には「闇の棋神」の称号が授与される。
秋季大会(団体戦)
参加資格:1チーム3人とし、全員Total Rank 7級以上(第1回大会のみ不問)。基本、乱戦、布陣を1人ずつ担当する。
予選トーナメント:Stage1~3の3戦勝負。上位16組が決勝に。
決勝トーナメント:Stage4~9の6戦勝負。<4勝>、または<3勝でStage9の勝者>が勝ちとなる。
表彰:優勝チームには「闇の棋神軍」の称号が授与される。
テーマ例
1.「闇将棋」そのものに焦点を当てた物語。通常の将棋以上の緊張感や、予測不能の事態に陥る苦しみなどをリアルに描く。闇将棋に関わる人たちの人生にからませながら、「闇将棋」の醍醐味を伝える。
「月下の棋士」のような、鬼気迫る劇画?
2.経済界を陰で動かす手段となっている「闇将棋」の物語。限られた情報から戦略を考え、それを実行する度胸など、闇将棋と経済との共通点は多い。闇将棋での戦いと経済での戦いを重ねながら、いずれの戦いでも最高位の「棋神」を目指す若者の生き様を描く。
ビジネス指南書?
3.シリアスな闇将棋の世界観を、太った猫を主人公としたギャグの世界にオーバーラップさせる。ネズミと猫の壮絶な(?)戦いを描く。
ギャグマンガ
4.駒それぞれを戦士に当てはめ、ネットワークの中で繰り広げられる未来戦争を描く。6つのステージをクリアしながら、暗黒星雲の宗主である「闇の棋神」を打ち破る戦いが繰り広げられる。戦場では人の心に不信感を生んだり、潜在している恨みや不満などを顕在化させるため、味方同士での様々な葛藤が生まれる。「王」はそれを克服しながら敵を殲滅していかなくてはならない。裏切り、不信、葛藤など、人間の負の感情の中での生死をかけた戦いがテーマとなる。
SFファンタジー
[テーマ1の例]
〈プレリュード〉 最後の戦い
闇森家の運命は、五才の龍騎が薄暗い祖父の部屋で一つの黒い将棋駒を見つけた時に、すでに決まっていたのかもしれない。
朧気な意識の中で、龍騎は突然一三年前のあの時の様子が浮かんできたのに驚いた。なぜ今頃、あのことを思い出したのか?しかも、なぜか着ていたTシャツの模様や色までも鮮やかに脳裏に浮かんでいるのである。
「お兄ちゃんはだれ?」
五才の龍騎が突然こちらを振り向き、話しかけてきた。
〈え?なに?俺に話しかけてきたのか?まさか、これは夢だぞ……〉
「ねえ、この駒変だね。真っ黒だよ」
そんな龍騎の狼狽など歯牙にもかけず、五才の龍騎は掌に載せた将棋の駒を龍騎の前に差し出した。
「お兄ちゃん将棋できる?」
〈??〉
「ボク今日、外に遊びに行けないから、いっしょに将棋やろうよ」
五才の龍騎はいつの間にか小さな将棋盤を置き、パチパチと駒を並べ始めた。龍騎は混乱した意識の中で、本能的に足下にあった駒をつかみ、盤に置いた。
「あれ!お兄ちゃんの駒、黒いね。ボクがおじいちゃんの部屋で拾ったのと同じだ。もしかして、これ、お兄ちゃんの駒?」
眼前に突きつけられた黒い駒を、龍騎は改めて注視した。「龍」。その瞬間、激しい頭痛がしたかと思うと、突然覚醒したかのように意識が明らかになった。
〈そうだ、「龍」だ。あの「歩」の後ろに隠れているのは。紛れもなく「龍」に違いない〉
五才の龍騎が手に持っていたあの駒こそ、「歩」の陰で虎視眈々と龍騎の「王」を狙っている敵の刺客だったのである。なぜそれに気づかなかったのか。考えてみれば、この局面で強引に王手をかけてくるはずはないのだ。あの「歩」は、単なる隠れ蓑。あの「歩」の後ろにこそ、闇の中に潜む真の刺客がいるのだ。そう思った瞬間、彼の脳裏から闇が消え、敵の布陣がすべて白日のもとに晒されたのである。彼は「王」を一旦敵の「と」の死角に待避させると、敵の次の一手とほとんど同時に持ち駒の「角」を、敵の見えない「玉」と「龍」に向けて張り付けた。まさに一発逆転の「神の一手」だった。
敵は見えない「角」からの攻撃にうろたえ、「玉」を唯一の隙間に待避させた。しかし、それこそが龍騎が事前に作り出しておいた「奈落の底」だったのである。
〈第一話〉
「龍ちゃん、『闇将棋』を知ってるの?」
ガラッと勢いよく教室のドアが開くと、例によって、拓也が唐突な質問を投げかけてきた。その目はいつもの好奇心に輝く目とは違い、何か不安を感じさせるものだった。その表情と唐突さに、龍騎は一瞬思考が停止した。
〈『闇将棋』?知っていると言えばいいのか。あいつはどこまで知っているんだ?目に浮かぶ恐怖はいったいどうしたんだ〉
驚いて硬直したかのような龍騎の姿を見て、拓也は龍騎が何も知らないのだと理解した。
「ああ、よかった。龍ちゃん何も知らないんだね。安心したよ」
そう言うと、拓也は心から安心したような表情となり、龍騎のところに駆け寄ってきた。いつものあどけない表情の拓也を見ながら、龍騎は突然の違和感に襲われた。
〈中学生にもなって、相変わらずのガキだな〉
そう思った瞬間、彼は再び身が硬直するのを感じた。
〈中学生?なぜ?どうして拓也が中学生なんだ?〉
そう、中学生だった。目の前の机に腰掛けて足をぷらぷらさせている拓也は、紛れもなく中学生の姿だった。
〈ばかな!〉
龍騎は槍で突かれたような衝撃に打たれ、思わず立ち上がった。と同時に、彼の脳裏に恐ろしい考えが浮かんできたのである。
〈まさか〉
龍騎は急いで教室から飛び出すと、トイレにある鏡をのぞき込んだ。
〈中学生?俺も?〉
とそのとき、突然激しい頭痛に襲われ、龍騎はその場にしゃがみ込んだ。強烈な痛みの中で、彼は誰かが自分を抱きかかえて移動するのを感じた。
「この頃、頭痛の回数がひどくないか?やっぱり、一度ちゃんと脳外科にみてもらったほうがいいよ」
大学生の拓也が、心配そうに龍騎の顔をのぞき込んでいた。
「拓也?」
「どうした?まだ頭痛がひどいのか?」
ようやく回復してきた意識の中で、龍騎は自分が公園のベンチに座っているのを知った。拓也の言うように、確かにこの頃は頭痛がひどい。しかも、頭痛がしたときは決まって自分の意識が過去にさかのぼっているのである。頭痛は子供の頃からの症状なのでさほど驚かないが、意識が過去に飛ぶことには、何か言い知れぬ恐怖を感じずにはいられなかった。しかも、必ずと言っていいほど「闇将棋」の話が関わっているのである。
「拓也……」
「ん?何だ?」
「おまえ、闇将棋のことを、誰から聞いたんだっけ?」
「誰から聞いた?……何を言ってるんだ。龍騎から聞いたんじゃないか」
「え?俺から聞いた?」
「そうだよ。中一のとき、おまえが秘密の部屋に連れて行って教えてくれたんじゃないか」
「俺が教えた?お前に……」
「ひょっとして、その頭痛が原因で、記憶がおかしくなったんじゃないのか?」
「いや、そんなことはない。中一のとき、お前は俺が秘密の部屋に連れていく前に、すでに闇将棋のことを知っていたじゃないか」
先ほどの中学時代の様子が、微かに脳裏をかすめた。
『闇将棋』を知ってるの?
そうだ、あいつは確かにそう言った。「『闇将棋』って知ってる?」ではなかった。これはつまり、俺がすでに闇将棋のことを知っているという前提であり、その確認にすぎないではないか。やはり、拓也は俺が教える前にすでに闇将棋のことを知っていたんだ。
では、なぜあいつは今、俺から教えてもらったと言ったんだろう。そう思った瞬間、龍騎は急に立ち上がって拓也の襟もとを締め上げていた。
「りゅ、龍騎、何するんだよ」
「言え、なぜ俺に嘘をつく」
「嘘?俺がいつ嘘をついたというんだ」
「今だよ。たった今だ。お前は俺が教える前に、すでに闇将棋のことをしっていたじゃないか」
「う、嘘じゃない。闇将棋のことは龍騎から教えてもらったんじゃないか。それまでは俺は闇将棋なんてものがあるなんて、全く知らなかった……」
驚くほどの力で締め上げられながら、拓也は必死で龍騎の誤解を解こうとした。しかし、龍騎は拓也の言葉を全く信じていないように思われた。と、そのとき、
「龍騎、拓也、そこで何してるのよ」
と、なじみのある甲高い声がした。振り返った龍騎の目に、従兄弟の咲子の姿が飛び込んできた。仁王立ちし、目を怒らせている。はっとして、龍騎は本能的に拓也の襟から手を離した。
「喧嘩するんなら、もうちょっと男らしくやりなさいよ」
「け、喧嘩じゃないよ。拓也が嘘をつくから……」
「嘘なんかついてないよ。龍騎が何か勘違いをしているんだよ」
拓也はようやく解放され、荒い息をつきながら反論した。
「ひょっとして、闇将棋のことかな?」
「えっ?」
二人は驚きの声を上げて咲子を見た。そして、今まで気づかなかったが、咲子の後ろに一人の黒ずくめの男が立っていることに気がついた。
〈第二話〉
〈プロット〉
時代 現代
場所 東京、他
登場人物
闇森龍騎 大学一年生。小学校一年生のときに将棋の小学生チャンピオンとなり、その後六年間無敗を誇った。そのため、日本の将棋界きっての天才棋士としてマスコミにもてはやされた。しかし、持病の頭痛がもとで(?)、中学入学とともに将棋界から忽然として姿を消した。
一八才になったとき、彼は別人のような風貌で姿を現し、一大「闇将棋」旋風を巻き起こした。多くのお金が動き、表棋士界からも刺客となって次々にプロ棋士が挑戦してきた。
闇森アヤメ 龍騎の姉。事実上の龍騎の保護者。両親を失い祖父の家に預けられた二人は、闇森家の運命に引きずり込まれていった。
田崎咲子 龍騎の従兄弟。父の妹の娘。
秋津島拓也 龍騎の幼なじみで、兄弟以上の親しい仲。龍騎と同年齢で、現在同じ大学に通っている。後の闇の九棋士の一人。
骨(こつ) 正体不明の男。「闇将棋」と「表将棋」の対戦のプロモーターとして暗躍している。
〈粗筋〉
昭和三十年代の高度成長期のさなか、プロ棋士として大きな壁に行き詰まっていた闇森龍角は、苦悶の末、「闇将棋」を創案した。互いに限定された駒の情報をもとに戦う新ルールは、「将棋」以上の難しさと面白さがあると確信した。しかし、時代は何をやってもうまくいく高度成長期。敢えて相手の駒を隠して情報を制限するルールは、時代の風潮には合わなかった。
こうして、闇将棋は数十年の長きにわたって闇に葬られていた。しかし、時代は移り、今やかつてない低成長期の時代となってしまった。また、戦争は言うに及ばず、企業間の戦いも情報合戦の様相を示してきた今、限られた情報から戦略を練り、相手の意表を突く戦法が主体となる闇将棋は、企業戦士の精神的鍛錬の手段として脚光を浴びてきたのである。同時に、一般人の間にも、闇将棋は密かなブームとなり、今や将棋愛好家の数に迫る普及状態になってきた。これらすべてば、「骨」と呼ばれる一人の男によって生みだされたものであった。
誰も「骨」の正体は知らない。流暢な日本語からすれば、たぶん日本人なのだろうとは思われていた。しかし、それも確証があるわけではない。
一方、この闇将棋ブームに大きな危機感を抱いた人間もいた。代々有名なプロ棋士を輩出してきた槇家であった。「闇」という言葉の持つイメージが、将棋の健全さを損なうというのが一番の理由であったが、そこには人知れず大きな金が動いているという噂もあった。彼らはこのブームをなんとか阻止しようと、次々に力有る棋士を闇将棋のプロ棋士たちに挑ませた。負ければ棋士廃業という条件だった。この動きは、闇将棋の騎士たちを震撼させた。プロ棋士とはいっても、まだ戦歴も浅く、百戦錬磨の将棋界の刺客にはとてもかなわなかったのである。
そのとき、「骨」はある計画を持ち出した。それは、双方9人ずつの棋士による、双方の運命をかけた棋士戦であった。
将棋ファンも、将棋未経験の人も楽しめる、エンターテインメント型将棋です。